EXPO2025 丹波篠山国際博を振り返る ~ローカル:地域文化の視点から~
執筆者:吉良佳晃

2025年10月13日をもって大阪・関西万博が閉幕しました。
万博と関連して兵庫県では「ひょうごフィールドパビリオン」、丹波篠山市では「丹波篠山国際博」という独自事業を展開しており、私たち一般社団法人AZEも事業参画しコラボしてきました。今回は丹波篠山国際博事業として私たちの取り組んできた『農村×能村』を振り返り、ローカルの地域文化視点から未来社会を考えたいと思います。
「ひょうごフィールドパビリオンを振り返る」の投稿についてはこちら
1. EXPO2025大阪・関西万博 コンセプト
2-1. 丹波篠山市「丹波篠山国際博」の取組み & 参加部会
2-2. 一般社団法人AZE提供プログラム「農村×能村」
3. 里山・農村地域から未来社会への提言 「ネイチャーポジティブ×カルチャーポジティブ」
1.【EXPO2025大阪・関西万博 コンセプト】

コンセプト -People’s Living Lab –
未来社会の実験場 A laboratory for a future society
出典:開催概要 | EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト
2-1.【 丹波篠山市「丹波篠山国際博」の取組み & 参加部会 】
会期は万博よりも長い2025年4月1日~2026年3月31日までの1年間。歴史と文化・自然豊かな丹波篠山市。これらの素晴らしい資源や取組みを市民・国内外の多くの方々に知っていただけるよう、年間を通じたイベントや地域行事を市内全域で開催(期間中、市内どこかで体験、観光が可能)。
メインテーマ:
丹波篠山国際博 「日本の美しい農村、未来へ」
サブテーマ :
①市民:丹波篠山ブランドを世界へ
②食:農の都を未来へ
③文化芸術:農都創造を未来へ
④生物共生:自然環境を未来へ
⑤四季折々:美しい景観を未来へ
私たち一般社団法人AZEは「自然の恵み部会」に所属し、2年前の2023年から準備を進めてきました。他にも、クリエイティブ部会、1度来たら2度3度部会など分野別に部会が設置されており、それぞれで新たな連携を目指してスタートしましたが、そもそもの目的、コンセプト理解、共通の目標を理解し、設定するところからであり議論は難航していました。
●2023年6月4日 丹波篠山国際博 日本の美しい農村(仮)準備の会

「丹波篠山国際博 日本の美しい農村(仮称)」の準備の会(市長日記R5.6.8)/丹波篠山市より引用
開催を2年前に控えた6月。国際博への機運を高める準備会が開催されました。この時には兵庫県事業「ひょうごフィールドパビリオン」の認定プログラムになっている市内の事業者による取組み、構想を発表し、ここ丹波篠山では何ができるのか?未来への視点は?を共に考える機会となりました。
参考:丹波篠山市広報2023年7月号0607p10_11.pdf
●2023年8月27日 丹波篠山国際博推進市民委員会 設立総会
●2023年10月30日 第1回丹波篠山国際博 自然の恵み部会
●2023年12月15日 第2回丹波篠山国際博 自然の恵み部会
●2024年3月17日 推進市民委員会
●2025年2月19日 国際博プレ事業@篠山城大書院にて
●2025年4月1日 オープニングイベント

●2025年6月21日 推進市民委員会 中間報告発表
●2026年3月20日 国際博フィナーレ「未来へのバトン」フォーラム登壇

フォーラムの最後には「美しい農村、未来へ」の宣言文が読み上げられ、第2部では記念モニュメント「未来めがね」のお披露目も行われました。
参考:
丹波篠山国際博フィナーレ、そして「宣言」がありました(市長日記R8.3.23)/丹波篠山市
2-2.【一般社団法人AZE提供プログラム「農村×能村」】

私たち一般社団法人AZEとして提供したプログラム「農村×能村~文化を体感し、新しい文化を創る~」を振り返ります。農村には、農を起点に、暮らし、文化、コミュニティが形成され、長い歴史が息づいています。準備会では今まで取り組んできたお酒プロジェクトの拡大版を考えておりましたが、日本文化として世界的に評価されている「能」と出会い、農の都「丹波篠山」から新しい文化を創造していく意味を問いかける企画としました。
●2025年5月10日 第1回 田植え×能楽「高砂 たかさご」

詳しくはこちらから
【ミチのムコウ】丹波篠山国際博オリジナル企画『農村×能村』 田植えVer | 丹波篠山 吉良農園
●2025年11月1日 第2回 里山の夜テラス能 里山×能楽「融 とおる」

詳しくはこちらから
『農村×能村』 第2弾 里山の夜テラス能 | 丹波篠山 吉良農園
●2025年11月23日 篠山大謡「羽衣 はごろも」 出演 (市民参加)


3. 【里山・農村地域から未来社会への提言】
さてここまでは取り組みを振り返ってきましたが、むすびに丹波篠山国際博のテーマである『日本の美しい農村、未来へ』を私たちの視点で再考していきます。
美しい農村とは?「ネイチャーポジティブの視点」
考えるヒントに、ここで高校国語の教科書で学習する評論として有名な丸山真男の【「である」ことと「する」こと】を引用します。
【私たちの社会が自由だ自由だといって、自由であることを祝福している間に、いつの間
にかその自由の実質はカラッポになっていないとも限らない。自由は置き物のようにそ
こにあるのではなく、現実の行使によってだけ守られる、いいかえれば日々自由になろ
うとすることによって、はじめて自由でありうるということなのです。】
日本の思想(丸山真男著、1961、岩波書店)
美しい農村もまさしくこのように言えないでしょうか。美しいことを祝福している間に、いつの間にかその土台が崩壊しつつある。美しい農村は置き物のようにそこにあるのではなく、絶え間ない営農をはじめとする仕事、暮らし、手入れがあってこそ美しい農村を未来へ伝えていけるものなのではないか。
昨今、日本の文化・農村が海外から注目されています。農村に関するインバウンド観光コンテンツもたくさん出てくるようになりました。地方には、農村には、コンテンツがたくさんある、それを活かさない手はない、と。しかし、これだけでは美しい農村を置き物にすることになりはしないだろうか。経済活動を活性化「させる」ための新たな資源のひとつであるという視点だけでは「消費」となってしまいます。農村の豊かな自然は、人と自然との共生を前提とした「再生産経済」です。これはグローバルにも叫ばれている生物多様性の視点「ネイチャーポジティブ」にも通ずるものがあると感じます。
農村×能村から見えてきたもの「カルチャーポジティブの視点」
ただそこにある自然や風景を消費的に観光するのではなく、あり方に触れたい、学びたい、一端を担って感じたい、美しい農村「である」ために、何を「して」きたのか、これから何を「する」のかを関係的にとらえたい方々との出会いで気づくこと。それは実践の場で想像し、実践を通じて創造する、ことの面白さ。農村の美しさとは、時代に合うカタチで受け継がれ、取り組まれ続けてきたそのダイナミズムへの参加と、その結果としての風景、多様性、仕組みへの畏敬の念との共存であると思います。
農の営みの一端を担うお米つくりへの参加、その恵みをお酒へ。100人ではぐくむ体験プログラムと、農業文化に端を発する言われ700年の伝統を受け継ぐ能楽とコラボすることで再び想いを一つにする。私たちのプログラムではそのきっかけを提供させていただきました。
また市民として参加した「篠山大謡」、自分の声で謡うことにより能の世界を体験し、農業と能楽との接点を体感することができました。
大切な点は身体との連続性にあります。ある部分だけを切り取り、抽出することでは文化は継承できないとも感じました。核心部分は変えず次世代へ受け継いでいくためにも時代に合ったあり方にアレンジする文化創造「カルチャーポジティブ」の視点が必要です。
未来へつなぐ = 「ネイチャーポジティブ」×「カルチャーポジティブ」な社会を
現在の農村部では、高齢化、人口減少が加速しています。減ったから増やすではなく、新しい仕組みを構築していく。万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」はグローバル社会、丹波篠山国際博「美しい農村、未来へ」はローカル社会の「未来」を私たちに問いかけるきっかけとなりました。
AI全盛の時代にあって、分かりやすい・効率的という文脈ではこぼれおちる「人間味のある部分」を今一度見つめ直したいと思います。
- 農業は一次産業ではなく「人と自然の関係性を継承する文化」
- 製造業は二次産業ではなく「技と創造性を継承する文化」
- 観光業は三次産業ではなく「地域の物語を共有する文化」
と定義しなおし、これからも「農業を通じて次世代へ」の吉良農園、「多軸なライフスタイルを」の一般社団法人AZEがコラボした挑戦は続きます。
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『一般社団法人AZE』 ~ 多軸なライフスタイルを ~
里山に学び、SATOYAMAを創る
【お知らせ】
●参加申込受付中! ミチのムコウ「100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒2026」
2026参加申し込みはこちらから
連携している狩場一酒造さんはこちらから
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