「農村×企業」の可能性 ~企業研修を通じて~
執筆者:吉良佳晃
企業研修の受け入れの話をここ数年少しずついただくようになりました。背景にはSDGsやネイチャーポジティブなどの社会課題解決に向けた動きがあるかと思います。ここではふたつの企業研修を通じて感じた課題と可能性、企業の方々へ期待することを簡単にお話します。
越境型企業研修ALIVE
2025年9月から12月の3か月間、答申先として取り組みました。

主催:一般社団法人ALIVE https://alive0309.org/
12月の最終プレゼンにて一部採用とした事業案を具体化してスタートすべく、企画ミーティングを進めており、2026年度には実証に入る予定です。
丹波篠山アカデメイア プレ企画
DAY2「継承と革新」

主催:株式会社創造農村 https://sozonoson.com/
「農家×企業」の課題と可能性
農村における農家、都市における企業、この両者にある異なる課題、価値観をどのようにクロスさせ未来を創造していくか。一歩間違えると、どちらかの価値観を一方的に押し付けることになる危険性があります。ここでは次の3つにポイントをしぼって考えてみます。「短期と長期」「スケールと複雑性」「暗黙知と形式知」という矛盾する課題とどのように向き合うかです。

短期と長期の矛盾
企業の方々からは、「日頃は四半期もしくはもっと短いスパンでの結果を求められる」という話をよく伺います。農家でも市場とつながっている部分、例えば野菜栽培においては種まきから収穫までは葉物であれば早ければ2か月ほどで出荷でき、日々の管理がある一方、土づくりや受け継いできた農環境をも包括して考えると50年、100年それ以上の歴史があります。農業としての「継業」と、農家としての「継承」とは同じような意味にとらえられがちですが、実はレイヤーが異なるという視点からお話しすると皆さんとても興味を持たれます。また「利益」や「持続可能性」という言葉でも、短期視点と長期視点を自然との共生を目指しながらの文脈、実感でとらえ直すことの重要性は今後ますます重要になってくるでしょう。
スケールと複雑性
経済の合理性、経営の安定化を目指す場合、大規模集約の議論に集約されることが多くなってきました。それに適する環境ではひとつの解決策でしょう。ヒット商品の開発も大切です。一方で自然環境や暮らしが近い中山間地の農村部においては、そう単純化できません。経済的でないという理由で切り捨てられる部分に実は多くの学ぶべきポイントがあります。
暗黙知と形式知
生物の多様性と同じくらい今、陰ながらものすごい勢いで絶滅が危惧されているものに農村における暗黙知、身体知の消失があります。これは役に立つという文脈を越えた、文化的なレイヤーの問題でもあります。日本におけるわびさび。これは博物館のような静的なものではなく、暮らしや営農という動的な営みの中で受け継がれてはじめて文化として後世へと継承できていくものだと考えます。マーケットからの要請ではなく、あくまでも地域における必要という要請からの知の継承。ここにも大切なものがたくさんあります。
企業の皆さまへ期待すること
研修における質問として、よく尋ねられるのが「私たち企業に何を期待しますか?」という質問です。これには今まで具体的な回答をできずにいましたが、研修を重ねていくうちに見えてきたことがあります。それは以下の2点です。
ひとつめは実践者の具体的なサポートに関すること。ふたつめは教育の場の共創です。すでに述べた3つの矛盾を農村地域だけが負担する外不経済の構造からシフトする社会を共に創り上げていくパートナーとなることを期待します。
私たち農家の役割
農家自らが農村農業の現状、課題を語ることが非常に大きな意味をもちます。
時にはとても解像度高く具体的に、時にはグローバル社会の課題と対応させて視座を高く抽象的に、時にはほかでもない自らの当事者意識を前面に。そして最も大切なのは、日々の実践の背景や意味を言葉だけで切り取ることなく、少しでもいいので協働を通じて体感してもらい、五感と思考で伝える場と機会をつくることです。人口減少と高齢化により、日々の仕事ですらままならない私たちですが、この余白をつくれるかが大きな岐路になるかと思います。企業の方々に期待することにも述べましたが、ここを経済的にサポートいただくこともお互いの未来をつくる共創の場にもなると考えます。

「農村×企業」には、これからの教育、ビジネス、社会をアップデートしていく可能性を秘めています。吉良農園と一般社団法人AZEは、これからも農業・農村を実践フィールドに、新しい未来を築いていく場と機会を提供していきます。共に学び、未来を創っていきましょう!
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