イノシシによる被害 ~獣害と山とのつながり~
2025年のスタートとして3/22にじゃがいもの定植の様子をアップしていましたが、イノシシの被害にあってしまいました。種類によっては植え付けた半分ほどが掘り返されて、かじられています。芽が出ているものも多く、発見した時にはがっくりと肩を落としましたorz


右)電柵設置後
山からはかなりの距離があり、今までイノシシの被害をうけたことはない圃場でしたが、対策が必要となってきました。被害にあった種芋はもう発注が間に合わないので、新たに電柵を設置し荒らされたところを整備するにとどめることになりました。電柵の新設コスト(本体+支柱+電柵+乾電池)、設置と整備に伴う人件費、想定出荷量3割減。合計すると利益はほとんどなく赤字の可能性が高いのですが、被害のなかったじゃがいもについてはお客様にお届けできるよう出荷まで栽培管理に取り組みます!
被害が出た報告で終わるのは悲しいだけですので、自然との共生を目指し、せっかくの機会ととらえて獣害という側面から農業について考えてみましょう。

私たちが農業を営んでいる地域は「中山間地」に分類され、その中でも山と地続きの細い谷間にある集落です。農村風景としては牧歌的に移りますが、営農面では日々野生動物の脅威にさらされていますし、山林の荒廃により被害は加速しています。

山がちな日本においては、中山間地での農業が面積38.1%、農家数44.7%、出荷額40%とその存在が大きいことが分かります。
今回は獣害とかかわりの深い【山と農家との関わり】にスポットをあてます。
農家なのに山?と不思議に思われるかもしれませんが、実は農村における山林の多くは農家もしくは集落の村山として所有されているのです。これには歴史的背景があります。現代のライフスタイルや農業生産方式が普及する以前は、生活や営農をしていくために資源を地域から調達していました。ずっと昔の話ではなく、ほんの60年ほど前のことです。薪をとり、柴を刈り、牛のエサとして草を刈る。堆肥を田んぼに使い、刈草も堆肥化させる。そのためにも山林は貴重な資源供給源であり、管理をし続けていく場所でした。


市場経済が発展し、ライフスタイルが変化していくにつれ、山林との関わりが薄くなっていきました。生活面では薪は使わず石油や電気に、営農面では牛はいなくなり肥料は化学肥料を購入したほうが安く、手間がかかりません。こうして山林は資源供給源ではなくなり、山林に人の手が入らなくなり、木々は生い茂り、倒木が発生しても放置されだんだんとかつての里山とは違った姿になってきました。こうして今まで山の奥のほうに生息していた大型の野生動物たちの生息域が、営農環境の近くまで数十年かけて少しずつ拡大してきたといわれています。
思い返せば、今から30年ほどまえの小学生の時には「獣害」という言葉を聞くこともなく、その対策としての「電気柵」は見かけませんでした。今となっては田んぼや畑の周りを見ると、電気柵のある風景が当たり前となっています。

電柵を使用し水際で食い止める(コストアップ)、倒木があれば処理する(コストアップ)、花粉症で大変(コストアップ?)と山林はコストばかりで利益の源泉よりはやっかいものになっています。遠くから風景として眺める分には緑豊かに映りますが、その場で営農する立場にある私たちにとっては問題が山積しており、その一つが獣害として現れています。
よく条件不利地ではコストがかさむだけだから農業をやめたらいい、転職したらいいという話もききます。農業を食料の生産という経営側面だけから判断するならばまっとうな論理です。しかし、そのほか重要な役割をも果たしているが、市場における販売価格に転嫁されていない部分が実は多く存在し、間接的に人々を豊かにしている面もあることを知ってもらいと思います。例えば、水源地としての役割、大雨の時の田んぼダム、営農を通じた多様な環境に生息する生物の多様性、安らぎを与える農村の風景、直接的な便益を感じることは少ないかもしれませんが、まわりまわって私たちの生活基盤を支える土台となっています。
これらのことを農林水産省の用語を用いれば「多面的機能」ということになります(表現が分かりにくいですが・・・)。
農林水産省:農業・農村の有する多面的機能
https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/nougyo_kinou/
農業は田んぼや畑の中で食料を生産するというクローズドな面だけでなく、田んぼの水利、浸透する地下水、畦草の生態系や景観、水源地である山林などを含めたオープンシステムなのです。農家というと田んぼでの作業がメインと思われるかもしれませんが、私たちのような中山間地においては山林維持管理を含めた仕事が農家の役割となっています。こういった維持管理活動は、基本的に農産物価格には反映することは難しく、地域や農家の努力によるものが多かったのですが、近年では見直しが図られつつあります。
例えば私たちは丹波篠山市より支援を受けて、3年計画にて里山整備にも取り組んでいます(丹波篠山市森つくり課 里山彩園事業)。こちらの活動もまた紹介していきます。

以上、今回は農業と山は実はつながっていて、その関係性が今はあまりよくないらしいということをご紹介しました。その弊害のひとつとして「獣害」があり、営農を続けていくことを困難にしている原因のひとつとなっています。こうしたことも一緒に考え、おいしい食べ物が食卓に届くよう、農村の豊かな風景が続いていけるようお伝えしていきます。
****************************************
『土』から『口』まで、より『良』きつながりを。
私たちは丹波篠山にて、「里山における有機農業」を実践するクリエイティブチームです。
【お知らせ】連携活動
●100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒2025【ミチのムコウ】 参加者募集中!
★お申込みはこちら(2025年4月20日締め切り予定)
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSePnZlasXJGIpYKei71iamhAkeag5thW2y2xy9xp5WzoKEjeQ/viewform
★プログラム内容はこちら(2025年3月6日の投稿)
****************************************